大髙醤油 昭和物語 ⑨「なんでも食べてみよう」
こんにちは。大髙醤油先代社長、現在は会長の大髙和郎です。
シリーズ・大髙醤油昭和物語の第9回目です。
今回は、この仕事を通して得た食に対する精神のお話をしたいと思います。(前回はこちら)
第9回 「なんでも食べてみよう」が味覚を鍛える
「つゆ」や「たれ」を作り始めた昭和50年代半ばから、私は、仕事の合間を縫って、評判のよい料理店にできるだけ通って、その味を自分の舌を通して勉強することに努めました。
妻や息子、営業社員も一緒に行くことが多かったです。
きっかけは、その頃大変お世話になっていた中国料理の名店・銀座アスターさんの谷田部専務(当時)がアスター社員の方々とともに連れて行ってくれた香港旅行です。
これは観光旅行と呼べるものでは決してなく、ちょっとした苦行と言ってもいい旅でした。
「夕食を2回食べる」のです。
谷田部さんは参加メンバーにこう命じました。
「香港の滞在は6日間。せっかく現地の味を知る機会なのに、夕食が6回しか食べられないのではもったいない。勉強に来ているのだから、一晩に2度食べれば12食できる」
料理店や屋台を巡り、「お、うまそうだな」というメニューを見つけたらすぐ注文。味を頭に叩き込む覚悟で食べます。
本場の料理ですからほとんど全部「うまそう」で、実際にうまいのですから、どんどん注文することになります。ということですぐおなか一杯になってしまいます。
小休止を入れたかどうか、二巡目へ突入です。
当時はまだ若かったからできたと思いますが、なかなかの厳しい苦行でした。
しかしそのおかげで、私はそれまであまりよく知らなかった中華の味の深さが骨の髄まで覚えられた、舌が肥えたように思います。
この経験は、大髙醤油での商品開発に大いに役立ちました。
実は子どもの頃から、食事に対してあまり頓着しなかった性分です。
しかし、このころから「なんでも食べてみよう」という意欲が強まり、自分の舌が鍛えられていったと思っています。
国内でもいろいろなお店に通いました。
いつだったか、年の瀬も押し迫りようやく忙しさがひと段落してくたくたの時に、たまたまつけたテレビで「京都料理の名店」の特集がありました。
「そうだ、京都行こう」と、翌朝の新幹線に乗り、日帰りで食べにいったこともありました。
食べるときはいつも、「この味はうちで出せるか」を頭に置いています。
特に気を配るのが、前回にもご紹介した「返し」、つまり醤油と酒やみりんなどを混ぜ合わせた調味料の味のあんばいです。
関東の濃口醤油か、薄口か。ほかの調味料の配合はどの程度の割合か。何か別の調味料や食材が潜んでいるのではないか・・・。
一方で、料理店の味は板前さんやシェフが独自に作り出した味です。
それをそのまま再現できたとしても、私たちのように企業の商品として量産するためには、ある程度の価格に抑えなければならないのもまた現実です。
どの程度であれば、商品として納得していただけるか、ここも極めて重要な要素です。
品質に重点を置くか、価格に重点を置くか。
そこに企業の特徴が出ると思います。当社は、品質優先でやってきたことが、良い結果につながったと今でも確信しています。
そして開発した商品が増えるとともに、いろいろなお店から「大髙さんは醤油だけじゃないんですね」と興味を示してもらい、また新たな商品開発につながっていく。
そこに至るまでは苦労が続きますが、「おいしいね、うちでも使ってみよう」とお声をいただくことが、ファイトが湧く源となっています。
今回はこのへんで失礼します。次回もどうぞお楽しみに。
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